a. 誤嚥性肺炎によるARDS……自発呼吸はあるが肺や胸腔コンプライアンスが低下しており、肺胞が虚脱しやすい。
(リクルートマヌーバー)時々35~40cmH2Oの高い吸気圧を40秒間維持して肺胞を広げる。
(open lung approach)10~15cmH2Oの高いPEEPにて肺胞虚脱を防ぐ。
(permissive hypercapnia)最高肺胞内圧を制御して、小さな1回換気量で換気し高二酸化炭素血症を容認する。<35cmH2Oを維持する。
b. 意識障害を伴う気管支喘息発作……気道抵抗により内因性PEEPがかかっているため、PEEPは禁忌である。小さな1回換気量でI/Eを小さくする。
c. 巨大ブラのある肺気腫患者の呼吸不全……気胸になるリスクがあり、PEEPは禁忌である。
d. 骨盤骨折による出血性ショック……PEEPをかけると胸腔内圧が上昇するため、静脈還流減少>心拍出減少>血圧低下となるため、禁忌である。
e. 高度の脳浮腫を伴う中枢性肺水腫……PEEPをかけると脳圧も上がることから禁忌である。
【人工呼吸の適応】
呼吸数>35/分、PaCO2>50mmHg、PaO2(room air)<50mmHg
【人工呼吸の目的】
①肺胞換気量の維持 ②酸素化能の改善 ③呼吸仕事量の減少
【人工呼吸器の設定】
①換気モード (自発呼吸がない場合)A/C またはSIMV
(自発呼吸がある場合)SIMV またはA/C またはPSV
・CPAP…自発呼吸+PEEP RDS、ARDS、肺炎、肺水腫、無気肺、COPD、SAS、気管軟化症
・A/Cモード…自発がある場合にはSIMVやPSVモードで、自発がない場合には量規定式調節換気(VCV)あるいは圧規定式調節換気(PCV)を用いる。
・PSVモード…浅くて早い自発呼吸やARDS、気管支喘息に用いられる。
・SIMVモード…自発がある場合には同期して強制換気が行われ、自発がなくなると調節換気モードそのものになる。
②吸入気酸素濃度(FiO2)1.0から開始して、SpO2が95~98%、PaO2が90~100mmHgになるように調節する。
③1回換気量(VT)7~10ml/kgで設定することが多いが、最高肺胞内圧<35mmHgを維持する。
④換気回数 A/CやSIMVの時に設定が必要。成人で12~15回/分で開始し、PaCO2を参考に調節する。
⑤I/E比 静脈還流を維持するために1:2あるいは1:3が適当。吸気時間は成人で0.8~1.2秒。
⑥PEEPレベル 5cmH2O
⑦アラーム 適正稼動状況の-50%~+50%に設定する。
⑧加温加湿 絶対湿度33mg/ml以上、34~39℃
⑨呼気ポーズ時間 全呼吸時間の10%
・脊髄損傷・薬物中毒……呼吸筋が働いていないので、自発呼吸との同調性は考えなくてよい。SIMVモードが適している。
【sedation】Ramsay鎮静スケールでⅢ~Ⅳが望ましい。
・ミダゾラム(ドルミカム) 作用時間が短い。0.03mg/kg/Hで持続静注する。逆行性健忘を伴う。フルマゼニル(アネキセート)で拮抗する。
・プロポフォール(ディプリバン) 0.5mg/kg/Hで持続静注する。副作用に低血圧・筋融解、代謝性アシドーシスがある。小児には禁忌。
・ハリペリドール(セレネース) 副作用に錐体外路症状・QT延長がある。
・モルヒネ 呼吸抑制・低血圧・痒み・消化管蠕動抑制がある。0.05mg/kgから開始する。