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平成17年度救急科専門医試験
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緊急検査と適応病態の組み合わせで誤りはどれか。
a. 造影CT・・・・・肺塞栓症
b. MR拡散強調画像・・・・・脳梗塞
c. ピークフローメトリ・・・・・COPD急性増悪
d. 脂肪酸結合タンパク(H-FABP)・・・・・急性心筋梗塞
e. コリンエステラーゼ・・・・・有機リン剤中毒

【 正解 】 c

a.       造影CT…急性大動脈解離と急性肺血栓塞栓症の第一選択である。
b.       MR拡散強調画像…DWI(diffusion weighted image)は、超急性期脳梗塞の診断に極めて有用。明瞭な高信号領域となる。
c.        ピークフローメトリー…COPD急性増悪時にはあまり使わない。
d.       脂肪酸結合蛋白(H-FABP)…心臓由来脂肪酸結合蛋白(Heart type fatty acid-binding protein:H-FABP)は,心筋細胞の細胞質に存在する分子量約15kDaの低分子可溶性蛋白である。生理的には,心臓において遊離脂肪酸の細胞内輸送をつかさどり,心筋細胞へのエネルギー供給に重要な働きを担っている。
H-FABPは,心臓虚血による心臓細胞の傷害時に速やかに血中へ逸脱するため,急性心筋梗塞(AMI)の早期診断マ-カ-として有用である.一般に,血栓溶解療法に代表される再灌流療法の効果が期待される,発症後6時間以内及びこれに準ずる発症後12時間以内のAMIの診断に有用である.また,H-FABPは心筋特異性が高く,心筋傷害の発症早期から血中に出現することから積極的な治療方針の決定が必要とされる急性冠動脈症候群の診断に有用である.心筋より逸脱したヒトH-FABPは速やかに血液中より消失することから,再灌流や再梗塞の指標となり,血中ヒトH-FABP濃度から梗塞サイズの推測も可能である.
e.        コリンエステラーゼ…有機リン中毒
有機リン中毒
コリン作用薬と同一である。コリン作用薬は副交感神経刺激効果を有しているので、副交感神経作用薬ともいえる。アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼを阻害し、神経シナプス間隙のアセチルコリン濃度を高めることにより、間接的にアセチルコリン受容体に作用する。有機リン化合物は近年殺虫剤として広く普及しているが、大きく有機リン系とカーバメイト系の2つがある。前者は不可逆的コリンエステラーゼ阻害薬であり、血液-脳関門を通過するが、後者は可逆的コリンエステラーゼ阻害薬であり、血液-脳関門を通過しない。中毒としては前者で重篤化することがしばしばであり、積極的治療が必要とされるが、後者では重篤化することは少ない。有機リン系として神経毒ガスのタブン、サリン、ソマンなど、また殺虫剤として使用されるパラチオン、マラチオンなどがある。
暴露後の症状の出現は吸収経路あるいは程度によって異なるが、一般的には1224時間以内に出現する。ある種の脂溶性の有機リン剤では症状出現に数日を有し、長期間にわたって症状が持続することもある。中等度では意識は清明で、頭痛、めまい、目のかすみ、脱力失調筋線維性攣縮不随意運動下痢腹痛、胸部圧迫感、喘鳴湿性咳
嗽など多彩な症状を呈する。各症状の頻度を図に示した。失禁、痙攣、意識障害の存在は重症例で認められる。このような多彩な症状はムスカリン受容体、ニコチン受容体、中枢神経受容体に作用する結果である。ムスカリン作用は副交感神経刺激作用であり、平滑筋、外分泌、循環系、眼への作用が中心となる。平滑筋では腸管蠕動運動が亢進し、一方膀胱排尿筋は収縮し、括約筋や膀胱三角筋は弛緩するため失禁が出現する。外分泌では汗腺、気管・気管支腺、唾液腺、涙腺、胃腸管外分泌腺の分泌亢進が認められる。循環系では末梢血管拡張、血圧低下、心臓に対しては陰性変時作用により洞性徐脈、また房室結節は伝導速度が遅くなり房室ブロックが発生しやすくなる。眼では虹彩括約筋が収縮して縮瞳が起こる。ニコチン作用は副腎髄質および運動神経-骨格筋接合部でニコチン作用を表すことから、腹痛、筋攣縮、脱力を呈する。交感神経系ではニコチン作用が副交感神経刺激作用を上回る場合には頻脈、血圧上昇が認められることがある。また、時に低体温が認められることがあり、その機序は明確になっていないものの、中枢神経系への作用、著しい発汗、筋脱力による悪寒の抑制などが考えられている。縮瞳と筋攣縮が最も信頼性のある有機リン中毒の臨床症状であるが、まれに瞳孔散大も報告されている。、副腎髄質からのカテコールアミン分泌による血糖上昇、尿糖陽性、白血球増多、低カリウム血症、外分泌腺からの分泌、特にアミラーゼ上昇が認められることがある。徐脈、頻脈以外の心電図異常は稀ではあるが、心室調律、多源性心室性不整脈、心室頻脈、Torsades de pointes、心室細動、心静止などが報告されている。QTcの延長がしばしば観察される。心筋炎の報告もある。
有機リン剤への曝露、ムスカリンおよびニコチン作用による特徴的所見、口臭などから一般的には診断は容易である。縮瞳は極めて特徴的であるが、散瞳が13%にも認められたとの報告もあるので、注意すべきである。また、硫酸アトロピンやヨウ化プラリドキシム(PAMによる臨床症状の改善も診断に有用であるが、硫酸アトロピン1~2mgの少量静注で改善が認められる場合にはむしろ可能性は少ない。

確定診断は血清コリンエステラーゼ値の低下である。コリンエステラーゼには偽性と真性コリンエステラーゼがあるが、真性コリンエステラーゼが神経シナプスでのコリンエステラーゼを反映する。偽性コリンエ
ステラーゼの低下は肝疾患など種々の病態の反映をするので考慮しなければならない。つまり、偽性コリンエステラーゼは感受性はよいが、特異性に欠ける。
初療は有機リン中毒に限らないが、気道の状態の把握、気道の確保、換気・酸素化能の改善維持がまず最優先される。その上で有機リンに対しての拮抗剤である硫酸アトロピンを投与する。硫酸アトロピンはムスカリン受容体でアセチルコリンと拮抗することによって作用を発揮する。したがって、ニコチン作用には拮抗しない。投与は2mgを15分ごとに投与をくり返す。小児では0.05mg/kgを15分ごとに同様にくり返す。症例により持続静注0.02~0.08mg/kg/hによる治療も行われる。平均的な硫酸アトロピンの投与量は40mg/日であるが、報告では1000mg/日を必要とした症例もある。投与はいわゆるアトロピン効果(頻脈、散瞳、口腔粘膜の乾燥など)が認められるまで行う。神経筋接合部や交感神経節でのニコチン受容体には硫酸アトロピンは作用しないので、そのためにPAMを投与する。筋攣縮、脱力などに対して拮抗し、早期の投与が必要である。一般的に24~36時間以内に1gを30~60分かけて静注する。臨床症状により1~2時間後、必要により10~12時間後に再投与する。投与後10~40分以内に効果が認められる。PAMのLD50は159mg/kgといわれ、通常の投与量では副作用はまずない。吸収阻止、排泄促進は他の中毒と同様である。
急性期合併症では痙攣、不整脈があげられる。急性期死亡は未治療の場合に24時間以内、治療例では10日以内が多い。一般的に有機リン中毒は10日以内で改善が認められるが、それ以降での死亡例では不整脈死が考えられている。遅発性の中毒症状として健忘、うつ状態、精神分裂病など中枢神経系の障害が知られている。また、末梢神経障害も認められる。
 
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