全身麻酔中に悪性高熱症の発症を最も早く察知しやすいモニターは何か。2つ選べ。
a. カプノメータ
b. パルスオキシメータ
c. 心電図モニター
d. 中心静脈圧
e. 尿量
【 正解 】 a,c
a. カプノメータ
b. パルスオキシメータ
c. 心電図モニター
d. 中心静脈圧
e. 尿量
【 正解 】 a,c
悪性高熱症(あくせいこうねつしょう、英)とは、全身麻酔の偶発症の一つ。頻度は稀であるが、適切な処置をしないと死亡率が高い。犬、馬、豚にも存在する。malignant hyperthermia:MH
○症状
異常な高熱と発汗、筋肉の硬直、頻脈、不整脈、酸血症、ミオグロビン尿(褐色尿)など。 骨格筋の崩壊による高カリウム血症で最悪の場合、心停止に陥る可能性がある。
○原因となりやすい薬剤
- 筋弛緩剤の塩化スキサメトニウム(商品名サクシン、レラキシン)など
- 吸入麻酔薬のイソフルレン(商品名フォーレン)、セボフルレン(商品名セボフレン)など
[編集治療法]
全身冷却、特効薬である筋弛緩剤ダントロレンナトリウム(商品名ダントリウム)の静注など。
全身麻酔中に発症を早く察知するには…
a. 呼気の二酸化炭素分圧が上昇し始めるため、カプノメータは有用。
b. 原因不明の頻脈や不整脈が出るため、心電図モニターは有用。
術前のラウンドで…
悪性高熱症の家族歴の聴取は必須である。
典拠: STEP麻酔科1版 [28, p.23]
- 概念
神経遮断薬と鎮痛薬とを併用することで意識を残して鎮痛作用だけをもたらすもの。 術者との応答を保ちながら手術が可能となる。
全身状態評価とASA分類
ASA アメリカ麻酔学会 American Society of Anesthesiologists
1度
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手術対象となる疾患以外に,全身的に疾患がない.手術対象の疾患は局所的で,全身障害を起こさない.
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2度
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軽度ないし中等度の全身疾患を有する.
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3度
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重篤の全身疾患を有する.
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4度
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重篤な全身疾患を有して,生命の危険な状態.
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5度
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死にかかった状態で,生存の可能性はほとんどないが一か八かの手術を受ける.
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この分類は「手術との兼ねあい」という尺度は入っていない.「患者の状態はよくないのだが手術が小さいから『リスクはよい』と評価しよう」という風には考えない.ただ患者の「全身状態」のみを分類する.
・胃内容の停滞時間…成人=5~6時間、小児=3~4時間
・緊急麻酔時のプレメディは、必要最小限でアトロピン・スコポラミン・H2ブロッカーなど。
概略
- 全身麻酔は手術で用いる技術であるので、典型的な開腹手術を想定して概略を述べる。術前の合併症や年齢、性別、体重、その他によって麻酔の手順はまったくことなり、それぞれの患者に応じた麻酔が行われるため、このとおりに行われないことも多くあることに注意されたい。
- まずは円滑に麻酔を行うために前投与と呼ばれる薬剤投与を行う場合がある。唾液分泌、気道内分泌の抑制、有害な反射の抑制のために抗コリン薬(アトロピンやスコポラミン)を用いる。また不安の除去、鎮静、催眠の目的にジアゼパムなどを投与する。これらは以前は病室で済ませておくことが多かったが、近年は疼痛や合併症を伴う筋肉注射を避けるため手術室入室後に投与することも多い。手術室に入室すると末梢静脈ルート確保の後、手術部位によっては局所麻酔の一種である硬膜外麻酔用のカテーテルを挿入する。そして十分な酸素投与を行う。患者を入眠させる導入という操作では主に静脈麻酔薬であるバルビツレートやプロポフォールと合成麻薬であるフェンタニルを組み合わせて用いる。患者入眠後はマスクにより気道確保、人工呼吸ができることを確認し、筋弛緩薬を投与する。筋弛緩薬としてはベクロニウムが用いられることがほとんどである。筋弛緩薬の効果が得られたら確実な気道確保のため、気管挿管を行う。その後は人工呼吸を行う。導入後は吸入麻酔薬であるセボフルランやイソフルラン、または静脈麻酔薬であるプロポフォールを持続的に投与し、麻酔の維持を行う。亜酸化窒素笑気)は近年では環境への影響(温室効果)や、術後嘔気嘔吐を招くことから敬遠されることが多い。手術が終わりに近づくと麻酔薬を徐々に減量し、手術終了すると中止する。患者の意識が次第に回復するので。手を握れる、深呼吸できるなど、筋弛緩薬の効果の消失の確認、麻薬による呼吸抑制の有無など確認し、条件を満たすなら気管のチューブを抜去する(抜管)。そして十分な確認の後病棟へ帰室させる。 (
○術前評価
患者の状態、手術の内容を吟味し最適な麻酔方法を検討する。
○患者の状態の評価
手術対象の疾患のみならず、これまでの病歴、合併症、基礎疾患についても評価する。
- 虚血性心疾患、不整脈などの循環器疾患の有無。
- 気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の有無。
- 高血圧、糖尿病、高脂血症をはじめとする生活習慣病や、喫煙歴、医薬品、薬物の使用歴。
- 体型。とくに極度の肥満。
- 気道確保は容易であるか。
- アレルギーはないか。
- 最終飲食はいつか。緊急手術の場合重要である。
- 各種検査データ(血液検査、心電図)および画像検査(X線写真、CT画像、MRI画像)など。
- 過去に手術や麻酔を受けて異常が生じた血縁者はいないか。
- 過去の麻酔歴、手術データがあればそれも参考にする。
- 手術の方法や手順に不明な点があれば主治医、術者に確認する。
アメリカ麻酔科学会(en:American Society of Anesthesiologists)では全身状態を6つに分類しており、ASA-PS(ASA physical status)と呼んでいる。手術前のASA-PSと予後は相関することが判っている。
通常の待機手術であれば十分な時間をかけた術前評価が可能だが、緊急手術では不十分になってしまうことが多い。
○麻酔方法の選択
実施する予定の手術方式や患者の状態に応じ、適切な麻酔方法を選択する。全身麻酔単独ではなく硬膜外麻酔や伝達麻酔など他の麻酔方法を併用することもある。合併症、基礎疾患によっては使用できない薬剤もあるのでよく検討する。
○術前訪問
患者を訪問し、診察や問診、実際に行う予定である麻酔方法の説明などを行う。手術前の患者はいろいろな疑問、不安を抱えている。これらに真摯に耳を傾け、的確な説明をし不安を取り除く。術前訪問は患者の状態を自分の目で確認し情報を得ることのみならず良好な医師-患者関係を築く第一歩となる。
○前投薬(プレメディ)
- 術前の不安を取り除いたり、術中の有害な自律神経反射を抑制する目的で行われる投薬のことである。
- 古典的な方法は鎮静薬と抗コリン薬を入室30分前程度に投与する。投与する。鎮静にはヒドロキシジン(アタラックスP)などを用い、鎮痛にはペンタゾシン(ソセゴン、ペンタジン)などを用いる。抗コリン作用としては硫酸アトロピンを用いる。これらは筋肉注射されることが多い。場合によっては胃酸分泌抑制薬も前投与する。
- 近年では疼痛や合併症を伴う筋肉注射を避けるため、内服のベンゾジアゼピンを用いたり、アトロピンなどは手術室入室後に投与することが好まれる。抗コリン薬は入室後、静脈ルートから投与しても術中の有害反射を抑制する十分な効果は得られるとされている。
○導入
専ら用いられるのは以下の3種類の方法である。 静脈麻酔薬としては、プロポフォールや、チアミラール、チオペンタールなどのバルビツール、ミダゾラムなどのベンゾジアゼピンが用いられる。
Rapid Induction (急速導入)
静脈麻酔薬を用いて入眠させる、通常の麻酔導入方法。
Slow Induction (緩徐導入)
吸入麻酔薬によりマスク換気で入眠させ、麻酔を深くした後、静脈路確保を行う麻酔導入方法。覚醒状態で静脈ラインの確保が困難な小児などに用いる。
rapid sequence induction (迅速導入)
以前はCrash Inductionとも呼ばれた。緊急時の手術の場合などで、胃内容物があるような場合(フルストマック)に誤嚥性肺炎の危険性が高いと考えられる場合に行う方法で、十分な酸素化と胃内容物吸引の後、静脈麻酔薬と筋弛緩薬を一度に投与し、マスク換気を行わずに気管挿管を行う方法。入眠後は輪状軟骨を圧迫して食道を閉鎖して胃内容の逆流を防ぐ(セリック手技)。
導入時に用いられるテクニック
Priming principle
一般的に行われる導入方法で、一度に全量の筋弛緩薬を投与するのではなく、投与量の少量を投与して後に挿管する方法。アセチルコリン受容体の一部をあらかじめ少量の筋弛緩薬で占拠しておくことで、非脱分極性筋弛緩薬でも迅速な効果の出現が得られる。
Precurarization
脱分極性筋弛緩薬(サクシニルコリン)の線維束成攣縮みによる胃内容物の逆流などを防ぐために、あらかじめ少量の脱分極性筋弛緩薬を投与しておく方法
○維持
プロポフォール、あるいは吸入麻酔薬を持続投与して麻酔の維持が行われる、近年のバランス麻酔では良好な鎮痛と覚醒を得るために、吸入麻酔薬やプロポフォールなどの鎮静薬を少なめにしてオピオイドを主体とした全身麻酔を行うことが好まれる。硬膜外麻酔を併用した場合、鎮痛薬も鎮静薬も少なくてすみ、術後の鎮痛も非常に良好である。筋弛緩薬もほとんど不必要であることが多い。2007年に本邦で発売されたレミフェンタニル(アルチバ)は短時間で作用し、どんなに長時間多量に使っても直ちに効果が消失する、理想的なオピオイドであり、これにより麻酔維持が根本的にオピオイド主体に変わることが期待される。しかし術後鎮痛が問題であり、麻酔科医は現在試行錯誤の段階である。基本的には術中はバイタルサインと手術の進行を見ながら、麻酔の深度が適切であるのか、鎮静、鎮痛は十分か、出血量はどうか、輸液の量や尿量は適切か、といったところを考えながら全身管理をしていくこととなる。
吸入麻酔
よく利用されるのは亜酸化窒素(笑気)、セボフルラン(セボフレン)、イソフルラン(フォーレン)である。以前は鎮痛・鎮静・筋弛緩の万能薬と考えられていたこともあったようだが、現在は筋弛緩薬、オピオイドを適切に使い、吸入麻酔薬は鎮静目的でのみ用いる、バランス麻酔が主体である。
静脈麻酔
麻酔維持に利用できるのはプロボフォール(ディプリバン、プロポフォールマルイシ)である。
筋弛緩薬
体動を防いだり、筋緊張をとりのぞいて手術操作をしやすくする目的で用いるが、十分な麻酔深度があれば不要なことも多い。高濃度の局所麻酔薬を用いて硬膜外麻酔を行えば、十分な腹壁の筋弛緩は得られる。
○覚醒・抜管
麻酔薬を止め、意識が回復し、筋弛緩作用からの回復も十分で、一回換気量、呼吸回数、従命可能であるなどの条件を満たせば気管チューブを抜くことができる。これを抜管(ばっかん)という。この状態でも筋弛緩薬の効果は残っているため、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるネオスチグミンと、ムスカリン作用抑制するための硫酸アトロピンを投与し、筋弛緩薬のリバース(拮抗)をおこなう。リバースを行う場合、筋弛緩薬がある程度自然に消退していないと、再燃をおこすため危険である。抜管後、患者を観察し問題なければ帰室させる。
○合併症
【全身麻酔でよく使われる薬物】
ここでは全身麻酔でよく使われる薬を述べていく。
☆麻酔薬
強力な鎮痛作用を持つが、最小肺胞濃度(MAC)が高いため単独で全身麻酔をするのは困難である。以下の吸入麻酔薬と併用して用いられる。しかし現在では全静脈麻酔(TIVA)の普及や、オピオイド主体のバランス麻酔温室効果の原因となるなど、次第に敬遠される方向にある。若手麻酔科医は吸入麻酔を用いる際も笑気をまったく用いない者も多く、次第に使用量は減少している。 が普及していること、また、術後の嘔気嘔吐の頻度が高まったり、笑気自体が
強烈なエーテル臭と気道の刺激性から、緩徐導入は困難であるが、生体内代謝率の低さから、肝・腎機能の低下した患者 の麻酔などで好んで用いられる。
血液ガス分配係数の小ささと臭いが穏やかなことから緩徐導入Compound Aが腎機能障害をおこすとされるが、高流量で用いる場合はほとんど問題がない。 に向く。ほぼどんな用途でももちいることができ現在最も頻用されている吸入麻酔薬である。代謝産物である
- チオペンタール(ラボナール)/チアミラール(イソゾール)
よく用いられているバルビツール系静脈麻酔薬 。小児にも成人にも使用可能である。喘息には禁忌とされるが、エビデンスはない。
肝臓での代謝が早く麻酔の導入にも維持にも好んで用いられる現在最も主流の全身麻酔薬である。疼痛効果がないPropofol Infusion Syndromeという重篤な病態が発生した報告があるためである。 のでフェンタニルなどの麻薬鎮痛薬や硬膜外麻酔などの局所麻酔と併用する。小児に対する麻酔目的での使用は禁忌ではないが、避けられる傾向にある。これは集中治療分野で、長期間鎮静のために投与された患者に
- ミダゾラム(ドルミカム)
短時間作用性のベンゾジアゼピン。循環抑制が軽く、重症患者の麻酔導入や、麻酔前投薬にも用いられる。
解離性麻酔薬と呼ばれる。視床、大脳新皮質は抑制するが、大脳辺縁系を賦活する。血圧上昇、頻脈 などをおこす。体性痛を非常によく抑え、熱傷の疼痛除去でも好んで用いられる。近年麻薬指定された。
拮抗薬にナロキソンがある。
- ベクロニウム(マスキュラックス)
非脱分極性筋弛緩薬である。拮抗薬にネオスチグミン(ワゴスチクミン) がある。
- パンクロニウム
非脱分極性筋弛緩薬である。ベクロニウムと比較して作用時間が長い。
- スキサメトニウム
脱分極性筋弛緩薬である。
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